CP/マルエーマルコと身体を重ねてしまったエース。積年の思いを叶えたマルコとは裏腹にエースの思いは複雑で・・・という感じの8話です。
性描写はありませんが、事後表現があります。
[7回]
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「エース・・・」
マルコはエースを抱きしめると、労わるように額にキスをした。
エースを拘束していた海楼石の錠が外れると、手首には赤く擦れた後が痛々しい程残っていた。
マルコは汗と精液にまみれて震えるエースを見て、まだなお身体に熱を持ちそうだったが、なんとか理性で抑えつけた。
快感の余韻で朦朧としているエースから目を逸らすように、マルコは部屋を見回して棚のタオルを手に取った。汲み置きの水でタオルを絞ると、行為とは打って変わって気遣うようにエースの身体を清めた。
身体を滑るひやりとした感覚に、エースは急に現実に引き戻された。
快感から醒めてみると、身体はギシギシと軋むように痛く、足は鉛のように重い。
普段使わない筋肉を酷使したせいで、太腿の痙攣が止まらず、下腹部には自分がぶちまけた精液が滴り、後孔にはまだマルコを咥えているような異物感とぬめりが生々しく残っていた。
事後の凄まじい自分の姿を改めて見ると、恥ずかしさを通り越して青褪めるのを感じた。
エースは今まで特に貞操観念を持っているわけではなかったが、心の準備もなく、なし崩しに行為に及んでしまったことでエースは取り返しのつかないことをしたような不安感に襲われていた。
複雑な思いのエースをよそに、マルコは何事も無かったかのように後始末をしている。
飛び散った精液を拭われながら、エースは茫然となすがままにされていた。
言葉を無くしたように黙り込むエースを気遣い、身体を拭きながらマルコは言った。
「おい、エース。大丈夫かよい」
行為に慣れているであろうマルコは、情事をする前と少しも態度は変わらない。エースにしたように慣れた手管で、過去に身体を重ねた相手が何人いたのだろうと考えると、より一層気が滅入るのを感じた。
暫らく沈黙した後、エースは誰に言うでもなくボソッと呟いた。
「・・・なんでこんなこと」
マルコとの行為に背徳感さえ感じ始めたエースにとって、これが一番正直な思いだった。
マルコは自分との行為を「こんなこと」とエースに言って欲しくはなかったが、情を交わすというよりは欲に流された強姦に近い行為だったため、エースの気持ちに折り合いがつかない責任はマルコにあった。
マルコにとっては兼ねてより不純な関心があった相手との行為だったが、エースは違う。正直にマルコの歪んだ欲望を告白してみたところで、エースにとってはただの理不尽でしかない。
借りを口実に自分本位な性欲の捌け口にされただけだ。エースの問いに答えを示せないまま、マルコも押し黙った。
女であれば身体から始まる情もあったかもしれないが、エースの場合はそう簡単にはいかないようだった。
マルコは自分の歪んだ性欲の部分は出来るだけ押し隠して、エースに気持ちを伝えた。
「俺は前からお前の事を気に入ってたんだ。お前があんまり無防備だったから、我慢できなくなったんだよい。気持ちがついてこないのに無理強いして悪かったな」
マルコは彼なりに本心を伝えたつもりだったが、真剣に落ち込むエースには後付けの言い訳にしか聞こえず、ささくれた神経を余計に逆撫でた。
「マルコはいいんだろうけど・・・!」
エースはカッとなっていきり立ったが、胸が詰まったようにそれ以上言葉が出てこなかった。
流されたとはいえマルコを受け入れたのは事実だし、元々は自分が何でもするというからこうなったのだ。身体で返すことが嫌であれば断固拒否するべきだったし、そうできなかったのは自分にも非がある。
それにこれ以上余計なことを喚いて、この歳になって性行為にショックを受けていると思われたくなかった。
文句を押し殺したエースは痛む身体で衣服を整えると、ベッドから降りようと足を床に下ろした。
「・・・俺、部屋に戻る」
「おい、待てよい。まだ無理だ」
二の腕を掴んで座らせようとするマルコを力任せになぎ払い、エースは立ち上がった。その途端、下半身に鈍痛が走り腰砕けになる。
「いっ・・・!」
「言っただろうよい。無茶するな、ここで寝ていけよい」
「うるせぇな、疲れてただけだ!」
痛む下半身を引きずりながらも「帰る」と部屋から出ようとするエースをマルコは宥めて引きとめようとしたが、意固地なエースは頑として聞き入れない。
気温がぐっと下がった夜半過ぎに、自棄になったエースを外に出すことを躊躇ったマルコは妥協するしかなかった。
「いいからこっちに来いよい」
押し問答の末、マルコは渾身の力でエースの腕を引っ張ると、自分の方に向き直らせた。
「お前が俺と一緒にいたくないのは分かったよい。だがそんな身体で夜中にフラフラ出ていかないでくれ」
マルコはそう言うと、エースをベッドに引き戻し、毛布を肩から掛けてやる。
「お前はここで寝ろ。俺が代わりに出て行くよい」
「えっ・・・」
エースには、ここから出ても凍えるように寒い自室しか行く宛がないことをマルコは知っている。サッチやビスタに頼るにしても、事後の雰囲気が匂う身体で他の男の部屋へ行って欲しく無い。いずれにせよマルコにとってはエースが自分の管理下にいた方が安心なのだ。
エースの気持ちが落ち着くまで側にいたいのが本音だが、自分のせいで想像以上に傷ついたエースに、してやれることはこれぐらいしか無いと思った。
マルコは上着を手に取ると、エースを一人残して部屋から出て行った。
マルコがいなくなって急に広くなった部屋で、エースは悔しいのか悲しいのかよくわからなくなり泣きそうな気分になった。
マルコの事がわからない。
ここ数日マルコの部屋に入り浸っていたおかげでエースは、(恐らくマルコも)互いに心が通い合ってると感じていたはずなのに、身体を交わした途端に相手の心がわからなくなるのはおかしすぎるとエースは思った。
- Continue ------------------------------------------------------
初体験が思いのほかショックだったらしいエース。閨の行為は鬼畜よりのマルコですが、普段は優しく良識のある大人、のはずです。
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