CP/マルエーエースがマルコの部屋で悶々としているころ、マルコは食堂で夜を明かしていました。エースとの行為を振り返るマルコ編です。
マルエーといいつつオールキャラ要素もあるということに最近気がつきました。
[3回]
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マルコは、昨夜自室を出てから行く宛もなく食堂で仮眠をとっていた。1番隊の大部屋に行こうかとも考えたが、滅多に顔を出さないマルコが来ては、隊員たちが恐縮するのが目に見えたので食堂に来ることにしたのだ。
食堂は隊員たちが寝るころにキッチンの火が落とされ、朝は隊員たちが起きるよりも早く火が入る。人がいる時間が長く、寒い時間帯は少ない。
今日はいつもより早くコック達が朝食の準備をしに下りて来たので、昨夜の温もりが冷める前に食堂にも暖房が入れられた。
再び暖まり始めた食堂で、マルコはあれからエースが大人しく部屋で寝ただろうかと考えながら、時間を潰していた。
エースがマルコの部屋に来るようになってから、エースも自分に少なからず好意があるものだと思い込んでいた。もとい好意があったのは間違いないが、強引に手を付けてしまったのは早計だったのだ。
エースの感じている好意は家族に対するようなもので、モビーディック号に乗っている他の隊員に向けられるのと同じものでしかない。夜を一緒に過ごすようになったマルコは、エースの中で他の隊員より少しばかり抜きん出た存在になったに過ぎないのだ。
昨夜、マルコは自分の欲望に負けたばかりか、エースと過ごす貴重な時間まで不意にしてしまった。
エースを捩じ伏せたい欲望の根底には、エースに誰よりも固執する情念があったはずなのに、うまく伝えられず、関係は最悪に拗れてしまった。
そもそも順序がまずかった、とマルコは反省した。
これからエースは、マルコの部屋に来る事はないだろう。もっと悪くすればマルコを避けるかもしれない。マルコが1番隊隊長である以上、仕事上で避け続けるのは不可能だったが、自分を嫌うエースと関わらなければいけないのはマルコにとっても辛かった。
どうしたものかと悩みながら、マルコは天井を仰いだ。
するとキッチンからコツコツと足音が聞こえて、振り返ると料理長が盆を片手にマルコの方に来ていた。
「こんな早い時間に人がいると思わなかったぜ。マルコ隊長がこんな明け方からどうしたんだい」
料理長は熱いコーヒーが入ったカップをマルコに差し出すと、隣の椅子にどかりと腰掛けた。
元々海賊だった料理長は、マルコが若い頃から白ひげの船に従事している。
マルコは悩むと食堂に来る癖があるのをよく知っていて、料理長はやってきたのだ。
「・・・ありがとよい」
マルコは出されたコーヒーに口を付けると、何を話すでもないまま沈黙を守っていた。料理長も長い付き合いのせいか、無理に聞き出すような無粋な真似はしない。人の気遣いに触れながら喋らなくてもいいのは、マルコにとってありがたかった。
料理長は暫くマルコの沈黙に付き合うと、時計を見ておもむろに立ち上がった。
「話せないほどの悩みなんてアンタには珍しいじゃねぇか。まあ好きなだけ考えて、聞いて欲しくなったら呼びな」
料理長はそう言うとキッチンに戻り、仕込みをするコック達に指示を出し始めた。
マルコは寝たような寝ていないような頭で壁掛け時計を見ると、夜番と交代で早番の隊員達が起きてくる時間になっていた。
暫くすると、遠くからザワザワという話し声と足音が聞こえ、食堂に近づいてくる。
「さあ、今日も忙しいぞ!エースが休みだからな」
そう言いながら、先陣をきって食堂に入ってきたのは、5番隊隊長のビスタだった。
ビスタは、食堂の隅に陣取るマルコを見つけると、コックから受け取った朝食を片手にマルコの隣へやってきた。
「朝からコーヒーとは優雅なもんだな。今日は朝番じゃないだろう」
「まあな」
朝からつれない態度のマルコに、ビスタは口ひげを弄りながら言った。
「朝から機嫌が悪いじゃないか。女に振られたような顔しやがって」
エースの事が頭を過ったマルコは一瞬怯んだが、すぐにいつもの表情に戻ると眉根を寄せてビスタに言った。
「女なんかどこにいるんだよい」
「いやなに、冗談さ。くだらない事を言った、忘れてくれ」
ビスタは豪快に笑うと、「食べないのか」とマルコに勧めながら、カリカリのベーコンと卵をフォークで器用に口に運んだ。マルコは食欲もないような気分だったが、手近にあったパン籠から小さいものを一つ選んで、千切って口に運びながらビスタの朝食に付き合った。
「今日も朝から保全作業かよい」
マルコは隊の動きを知らないわけではなかったが、確認するようにビスタに言った。
「そうだな、この悪天候の中わざわざ襲ってくる船もなかろう。今はこの海域を切り抜けるのが仕事だぜ。落ち着いてきたとはいえ、まだまだひどいもんだ」
ビスタが言い終わらないうちに、夜番を一足先に抜けたイゾウが、青褪めた表情で食堂に入ってきた。
「なんて天候だ!晴れたと思ったら急に1メートルの雹が降ってきて、うちの隊員が3人も医務室行きだぜ」
イゾウは夜番明けでいらいらしながら、コックから緑色のお茶をもらうとビスタの向かいに陣取り、寒さで震えながらカップで手を暖めていた。こんな極寒の中でも、イゾウはいつもと変わらない格好をしている。例え寒くても、伊達の薄着で厚着をするのを嫌うのだ。
マルコの存在に気づいたイゾウは、ビスタと同じことを言った。
「マルコじゃねぇか。真面目だな、今日は朝からじゃねぇだろ」
「早起きしたんだ、悪りぃかよい」
度々言われうんざりしたマルコは、即座に嘘を言った。
イゾウはコックに朝食を持ってくるよう伝えると、ビスタに当番の引き継ぎを簡単に伝えていた。
コックがイゾウに朝食を運んできた頃になると、夜番の隊員達が続々と食堂に集まりはじめていた。
朝食を終えたビスタは食器を纏めて席を立ちながら言った。
「隊員達が戻って来たから俺はいくぜ。マルコはどうするんだ。部屋に戻るのか?」
マルコは考えた。今部屋に戻ったとしてもエースがまだ寝ているかもしれない。昨日の今日でエースはマルコに会いづらいだろうし、二人きりになるのはまずいと思う自分がいる。部屋に戻ることができない以上は、船内で暇を潰すか仕事をするかしか選択肢は無かった。
「いや、することもねぇし作業を手伝うよい」
厨房に食器を戻すビスタについて、マルコは食堂をでた。
- Continue ------------------------------------------------------
オールキャラ的マルコ回想でした。
結局、冬島しか最近更新できてないですね。長くなってしまいましたが、冬のうちに終わらせます!
マルコはポーカーフェイスのイメージですが、エースは思った事がすぐ顔に出そうな気がします。そんな感じで11話に続きます。
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