CP/マルエー狼マルコの寝室に転がり込んだ羊エース。マルコは据え膳に見えるエースを前に頭を悩ませますが、エースはハッピーなくらい鈍感です。そんな感じの3話目です。
[3回]
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あまり興味がなさそうに半眼でニュース・クーを眺めるエースを、マルコは舐めるように見ながら言った。
「部屋が暖まったら帰るのかよい」
エースはニュース・クーを枕元に戻すと、うつ伏せに寝返りをうち、欠伸を噛み殺しながら答えた。
「んー。マルコの部屋が気持ちいいから、戻るの面倒くせぇ」
エースは自覚のない上目遣いでマルコの機嫌を伺うように言った。エースはマルコにこのまま寝ていけと言って欲しいのだ。
以前、エースが2番隊隊長に就任した際に船で大宴会が開かれたことがあったのだが、酷く酔ったエースは立つことが出来なくなり、マルコは仕方なく部屋で寝かせて帰したことがあった。
その時のマルコは今ほどエースに劣情を抱いていなかったため、今回とは状況がかなり違う。
マルコは、自分本位な欲望と立場の間で葛藤したが、このままエースを隣に寝かせてしまっては欲が抑えきれないのではないかと思い、本心を押し殺してエースが部屋に戻るのを促すことにした。
「・・・駄目だ、もう少ししたら帰れよい」
ところがエースは、マルコの枕を勝手に引き寄せ抱きかかえると、あくまでも帰えるつもりがないという態度をとった。
「いいじゃねぇか、マルコの部屋はベッドも広いんだし」
「何度言わせるんだよい。今日は立てねぇ訳じゃねぇんだから、部屋が暖まったら帰って寝ろよい」
マルコは年長の大人として当然の振る舞いをするように努めた。
一瞬の間の後、エースは子供っぽい我儘を押し通すように主張した。
「今日は一人になりなくねぇんだ。なんか気持ちが落ち着かねぇ。今度何でもマルコの言うこと聞くからさ。今日だけいてもいいだろ」
エースは本当に一人になりたくなくて、マルコの優しさに期待した。しかし、マルコは欲目を通してエースを見ているので、どこから見ても誘っているようにしか見えないのだった。
我儘で甘えるような態度を取るエースは年相応に幼く見え、マルコは改めてエースと一回り以上離れているのだと気付かされる。
まだ大人になりたてのエースは、時として感傷的になり人肌恋しくなることもあるのだろうとマルコは思った。
マルコは子供ほど年が離れた20歳そこそこの若者に、欲を感じている自分が醜く思え、理性で無理矢理抑えつけた。
エースを自室に帰すのがマルコにとって最善の方法だったが、一人になりたくないと訴える家族をそれでも追い返すのは、冷たいと感じられてしまうだろうとマルコは思った。
マルコに追い出された後、エースがそのまま素直に部屋に帰るとは思えないし、自分が把握しない隊員の所へ転がりこまれても嫌だった。
結局マルコは自分が苦しむ事になっても、エースを一晩側に置いておく事を選んだ。
「しょうがねぇガキだよい。寝るならさっさと寝ろよい」
「やった!」
エースはマルコの許しが出ると、遠慮という言葉は一瞬でどこかに吹き飛んだようで、足を上げてマルコの毛布に潜り込んだ。
「お、おい!靴を脱げよい」
マルコはエースの片足を掴むと、子供にするように片方ずつブーツを脱がせる。
「あ、マルコ悪りぃ。なんかこうしているとガキの頃みたいだ」
エースが自分の子供時代を話すのは珍しい。マルコは、白ひげも知らないであろうエースの昔話に興味を持った。
「お前がどんなクソガキだったか、教えてくれるのかい?」
マルコはブーツをベッド下に揃えて置くと、テーブルのランプを枕元に寄せた。自分もベッドに入ると右手で頭を支えてエースの話を聞く態勢を取った。
エースには島に残してきた弟がいること、エースに頼って泣き虫だった弟をいつも気に掛けていることを語った。
「・・・弟のルフィが、風邪を引いたときいつも一緒に寝てやってたんだ」
エースは手の平を天井にかざし、それが青春時代の思い出かのようにじっと見つめていた。
「頭とか腹とか、触ってやると安心するみたいで、よく撫でてやってた」
しんみりと弟を思い出すエースはどこか寂しそうで、マルコが思う以上に感傷的になっていた。ここ数日、厳しい寒波の中で休む間もなく働いていたため、精神的に疲労と孤独を感じていたのかもしれない。
「人は誰だって、誰かと一緒にいたら安心するもんだよい。人に触られたら、受け入れられてる気がして不安が消えるんだろうな」
マルコはそう言って、毛布の中でエースの腹を撫でた。
ビクッとしたエースだったが、マルコの優しい手つきに絆されて、なすがままにされていた。
「・・・マルコの手、暖けぇ。なんかすげぇ安心する」
「人の手は暖かく感じるもんだよい。頭も撫でてやろうか?」
マルコは茶化すように言った。
「それはいい」と笑いながら背を向けたエースを、マルコは後ろから抱き寄せた。背中と腹が密着して、お互いの体温がダイレクトに伝わる。
マルコはエースの頭を撫でるように掻き上げた。
「なんか、頭ゾクゾクする」
「気持ちいいんだろうよい」
マルコはエースの背中を包み込むように抱きながら、優しくエースの頭と腹をさすってやった。
マルコの人肌の温もりが気持ち良いのか、エースは大人しくマルコに身を預けていたが、しばらくすると寝息を立てて寝てしまった。
エースにつけ込むまたとないチャンスに何をしているんだという思いもあったが、滅多に見れないエースの一面を見る事が出来たので、マルコは自分の欲望と何とか折り合いをつけることにした。
- Continue ------------------------------------------------------
エースの眩しすぎるピュアっぷりに手が出せないオッサンマルコ。
いざ据え膳を目の前にして、色々と現実を考えてしまうマルコでした。
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