CP/マルエー忘れようと決めているのに、マルコの事が頭から離れないエース。
仕事の都合でマルコに会わなくてはいけなくなり、という感じの16話です。
更新が遅くなってしまいました!
[6回]
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その夜、エースはビスタやジョズと一緒に夕食を食べていた。
食事休憩で中番の隊員達がぞくぞくと食堂に降りてくる中、ビスタは肝心の隊長達が来ないことを気にしていたが、マルコと出来るだけ顔を合わせたくないエースにとっては好都合だった。
サッチに続きビスタまでがマルコとエースの仲を気にしていたが、ジョズもいるので相談する訳にもいかず、サッチにも話してない以上は何もないと嘘をつくしかなかった。
二人は食後に部屋で一緒に飲むかとエースを誘ってきたが、酔いに任せて余計な事を口走っても困ると思い、断った。
誰かに相談したいと思い詰めた時に頭に浮かぶのはいつもマルコで、本人とこんな事になっても一番に思い浮かべてしまう自分が情けなかった。
エースは久しぶりに自分の部屋に戻ると、しばらく使っていなかった暖房に火を入れ、冷たく乾燥したベッドに横たわった。
今朝までマルコの部屋に入り浸っていたのが信じられないくらい、今日一日の方が長かった。
自室に帰って来たところで何をするでもなくただ寝転んでいたが、気がつけばマルコの事ばかりを考えていたので、エースは気持ちを切り替えようと思い、冷たい風に当たるために甲板に出ることにした。
甲板では既に夜番勤務の隊に交代していて、十二番隊のハルタの部隊が夜警をしていた。
エースは昼間と同じように二階の甲板に行き、凍りつく様な風に吹かれながら海を見渡した。
暗闇の中で雪がチラつき始めたが、天候はここ最近ではなかったほど落ち着いていて、いよいよ冬島の海域を抜けようとしているのだと実感した。
波音を聞きながら一人感慨にふけっていたが、背後から柔らかい足音が近付いてきたので、エースは振り返った。
「よう、エース。ちょうど良かったぜ」
そこには寒そうな格好をしたイゾウが立っていた。イゾウはエースを見つけて近寄ってくると、手に持ってる書類をエースに渡した。
「これは?」
「次の島に寄港する時の段取り表だ。隊長回覧でお前が最後だから、読んだらサインして今日中にマルコに戻せよ」
「え・・・」
マルコという言葉を聞いて、出来ない言い訳を素早く考えたが、「朝もお前の部屋まで行ったんだぞ」と言われたので何も言えなくなってしまった。
イゾウは曖昧な態度のエースに、「必ず今日中に戻せよ」と念押しして去っていった。
思いがけない仕事が回ってきたエースは、他でもないマルコの元に行かなければならないので困ってしまった。
だが、いつまでも避けてはいられないのも事実で、たかが書類一枚サインして渡すだけで終わる仕事なので、思い切ってさっさと済ませてしまおうと居住区に戻った。
マルコの部屋の前を通ると、扉から灯りが漏れていたので部屋に戻っているのがわかった。エースは寄港の段取り表を一通り確認すると、意を決してマルコの部屋に行くことにした。
部屋のノブに手を掛けた時、マルコの部屋の方向に向かう聞き慣れない足音が聞こえたので出るのを思い留まった。
マルコは隊に関わる申請の承認者なので、寄港前など確認書類の多い時期はマルコの前に承認サイン待ちの列が出来るほど忙しくなる。
マルコの部屋に入った誰かも、寄港前に承認を貰っておきたい書類を持ってきたに違いないとエースは思った。
ところが先客は三十分経ってもマルコの部屋から出てこなかった。
承認だけなら可でも不可でもそれ程時間がかかることはない。もしかしたら誰かが、ビスタ達のように飲むために部屋に訪れたのかもしれなかった。
書類を片手に自室の内側からマルコの動向を伺っていたが、時間も刻々と過ぎていくし、我ながら男らしくないと感じたエースは、先客がいるにも関わらずマルコの部屋に行くことにした。
先客がいる以上はマルコと二人にならないで済むし、用事も早く終わるだろうと思っていた。
コンコンと扉を控えめにノックすると、中の話し声が一瞬息を潜めるように小さくなった。
少しの沈黙の後、マルコの声がした。
「誰だ」
名前を問われて急に緊張が高まったが、もう引き返せないと自分に言い聞かせて、扉に向かって言った。
「・・・エースだ、回覧書類を持ってきた。入ってもいいか」
名乗った後も、部屋がまた沈黙したので、先客はエースの知らない誰かのようだが、どうも様子がおかしい。
扉の外で入ってよいのかどうかわからずにいると、中から「どうぞ」という聞き慣れない声がした。
「おい、勝手なことするなよい」
マルコの咎めるような声もして、不穏な空気を感じたエースは、好奇心なのか無意識なのか、自分の理性とは別の何かが身体を動かし、扉を開けてしまった。
「・・・!!」
エースの目に、思ってもいなかった光景が飛び込んできた。
マルコは書類机用の椅子に腰掛けていたが、若そうな細身の男がマルコの太腿にのし掛かり、二人の顔が重なっていた。
エースの方からは若い男の後頭部しか見えなかったが、どういうことかは容易に想像できた。
顔が離れるとマルコは真っ赤になって怒りながら、のし掛かった男を殴り、無理矢理引き剥がした。
「・・・お前、どういうつもりだよい!」
殴られた勢いで男はマルコの膝から落ち、転んで床に手を付いた。
男は切れた口の端を手の甲で拭うと、エースを振り返り、口角を上げて挑戦的に言った。
「いらっしゃい、エース隊長」
「お前は・・・」
その男は、昼間に甲板で話していた十六番隊の隊員だった。
マルコに憧れていると話していたのを思い出すと、これから二人がしようとしていたことが生々しく想像できて、心が冷えた。
マルコは怒りと動揺で震える手で口を拭うと若い隊員に言った。
「悪ふざけも大概にしろよい!」
殴られ、追い打ちをかけるように怒鳴られた隊員は、拗ねたようにフンとそっぽを向いて黙ってしまった。
エースは二人の修羅場を見て、とんでもない場面に出くわしたとこんなに後悔した事はなかったし、何よりもマルコが許せなかった。
沈黙する二人を前に、一刻も早くこの場を離れたいと思ったエースは、机に書類を置くと、マルコの顔を見ずに嫌味を言った。
「せっかくの取り込み中に来て悪かったな。これ、全員サインしたから戻すぜ」
そのまま足早に部屋を出ようとしたが、マルコに渾身の力で二の腕を掴まれた。
「待てよい!お前には誤解されたくねぇ」
その一言にカッとなったエースは、マルコの目を見て睨みつけた。
「誤解?俺が誤解したらなんだって言うんだ、離せよ!」
掴まれた腕を思いきり振り払い、そっぽを向く十六番隊の隊員を一瞥して、エースは部屋から飛び出した。
- Continue ------------------------------------------------------
ややこしい話は好きです。
次はまたビスタが登場するかもしれません。
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