CP/マルエー白ひげ海賊団に入団直後のお話です。
エースに恋するマルコと、不死鳥に恋するエースという感じです。
[5回]
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子供の頃、燃え上がる青い炎のように揺らめく、美しい鳥を見た。星空を背に明るく輝き、長い尾は金色にはためいていて、息を飲むほど幻想的だったのを覚えている。その鳥は空高く舞い、次第に遠く離れて見えなくなってしまったけど、幼いエースの心に深く刻みこまれた。
兄弟のサボや弟のルフィに何度話しても笑われるばかりで、誰かに信じて欲しくてダダンにも話したが、寝ぼけてんじゃないよと一蹴されてしまった。
ガープだけは、エースの話を興味深く聞き、「東の海でか・・・、そんな事もあるかもしれん」と言ってくれたのを覚えている。
成長して、その事を思い出す事が少なくなるにつれて、あれは夢だったのではないかと思うようになった。
今となっては夢か現実か確かめようもなく、十七歳で海に出てからはそのことを思い出すこともなくなってしまった。
時が経ち、エースは白ひげ海賊団にいた。入団したのはサッチやマルコの後押しがあればこそだったが、実は他にも理由があった。
敗北してモビーディックに乗せられたころ、白ひげに夜襲をかけようとしたその時に、エースはまたあの青い鳥を見たのだ。今まで忘れていたはずの記憶が鮮明に蘇り、白ひげの背後を襲おうとした瞬間、夜空に瞬く青い光に目を奪われ、結果返り討ちに合ってしまった。
白ひげに船首まで殴り飛ばされたエースは、床に叩きつけられて朦朧とする頭で、夢にまでみた青い鳥がモビーディック号のどこかに消えていくのを見た気がした。
青い鳥に対する興味が再燃したのはそれがきっかけだった。モビーディック号に残ればいつか間近で見ることができるかもしれないと、そういう思いも確かにあった。
マルコに絆されて入団してから一ヶ月、あれからまだ青い鳥を見る機会はないけれど、夜になると甲板に出るのがエースの日課になっていた。
「お前、いつも甲板で海見てるよな。故郷が懐かしいのかよい」
「マルコ隊長」
マルコは入団以来、変わらずエースを気遣ってくれる貴重な存在だ。面倒見の良いマルコは、毎晩のように甲板に出ているエースに声をかけてはとりとめの無い会話に付き合ってくれている。
マルコがエースを構うのは単に尖った新人に気を掛けているからだけでは無かったが、色恋に無頓着なエースはマルコの下心に気付かない。
「いつまでここにいる気だよい、風邪引くぞ」
マルコはエースを抱き寄せるように肩を抱き、「今日こそは俺の部屋で飲まねぇか?」とかなり直球に誘ったが、当のエースにはにべもなく断られてしまった。
「また今度行くよ。俺、探し物してんだ」
エースにはそれが情事の誘いだとわかるはずもなく、いつもの常套文句でマルコを受け流すと、子供が夢を馳せるように夜空を見上げた。
「・・・そうか残念だよい、あんまり遅くまでいるなよ」
そしてマルコは諦める。これがいつものやり取りだった。
マルコの手は名残惜しそうに、エースをポンポンと軽く叩いてから離れるが、エースはマルコに触れられていたことさえ、気にも留めていない有様だった。
「おい、どうだった?って聞くまでもねぇか。上手く運んでりゃ今頃お前の部屋だもんな」
「うるせぇよい、黙れ」
マルコは食堂で酒を飲むサッチ達の席に加わり、自分はラム酒を一気に煽った。
「今日も振られたのか、全くの脈無しだな。あんな気の強い小僧のどこがいいんだか。そんなに欲しいなら隊長権限で黙らせて食っちまえばいいじゃねぇか」
イゾウは小さい御猪口でワの国の酒を飲みながら、恐ろしいことを言った。
「ガキ相手にそんな事できるかよい。情けねぇ」
今でも十分情けないだろうとサッチは思ったが、サッチはエースを一目見た時から、これはマルコの食指が動くだろうと確信していたので、たとえ全戦全敗でも簡単には諦めないだろうと思っていた。後は痺れを切らせたマルコが、イゾウが言うような強行手段にいつ出るかの問題に思えた。
「あいつは全く俺に興味がねぇな。どうしたもんか・・・」
「エースは探し物してるって言ってんだろ?一緒に探してやればいいじゃねぇか。探し物が見つかれば、お前を断る理由も無くなる」
ビスタは至極当然のように提案した。
「あいつの探し物ねぇ・・・」
毎日夜空を見ているだけのエースがどんな探し物をしているのか皆目見当もつかなかったが、すぐに見つかりそうにないものであることは確かだった。
- Continue ------------------------------------------------------
短く終わらせたいですがいつものように迷走中です。
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