CP/マルエー真面目で厳しい一番隊隊長マルコが、自由奔放な新人隊長エースを、叱って窘めて教育してアレやそれな話です。
[6回]
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「何度言ったらわかるんだよい!」
薄く開いた扉の隙間から、バンッ!と乾いた音が漏れる。
それまで廊下に溢れていた活気は、一瞬熱気を吸われたように静かになるが、それがいつもの光景とわかると、何事もなかったようにざわめきを取り戻していった。
-----またエースがマルコに怒られている。
もはや日常化した光景だが、エースが二番隊隊長に抜擢されてからというものマルコの指導は厳しくなっていく一方だ。
白ひげ海賊団の未来を担う若手育成に前向きな白ひげにも、「マルコ、おめぇ最近エースにちょっと厳しすぎやしねぇか?」と逆に窘められる程だった。
マルコにもキツく当たっている自覚はある。快活で人当たりの良いエースは、その性格と若さのお蔭で周囲から甘やかされて多少の事は大目に見られているのも事実だったし、隊の中で誰か一人は厳しく接する必要があると思っていた。
白ひげ海賊団に属するのを後押ししたのはマルコなので、エースの行動に責任を感じる親心もあるのかもしれない。
-----事の発端は5時間前。
モビーディック号で流行病が蔓延し、一時的に医療物資が不足した白ひげ一行が、物資調達のために寄港を余儀無くされた島で起きた出来事だった。
そこは海軍基地からもほど近い海軍管轄の島で、白ひげ一行は大きな港町から離れた入江にひっそりと停泊した。
寄港の目的は抗生物質の入手だった。
本来であれば上陸するのは船医だけで良かったのたが、一行にとって久しぶりの陸地だったので、元気のある者は上陸に浮き足だっていてエースもその中の一人だった。
普段は海軍が常駐しているような島では無かったため、「白ひげ海賊団である事を隠して行動すること」を条件に、白ひげからマルコ経由で隊員たちにも特別に上陸許可が出た。
この大航海時代で、どの島に行っても海賊は珍しくもないのだが、白ひげ海賊団となれば賞金目当てで通報され、騒ぎになることも少なくない。
海軍基地からもほど近い予定外の島で、余計な面倒を避けるための白ひげの指示だった。
上陸の許可が出て完全に浮き足立ったエースは、マルコが伝えた上陸の注意事項にも「わかった!」と勢いよく返事をしたが、上着を持たずに船を飛び出した。
「おい、エース!!人の話を聞けよい!」
マルコはとっさに怒鳴ったが、目の前の陸しか見えていないエースには届いていないようだった。
「サッチ、ビスタ!お前らもエースから目を離すんじゃないよい」
エースを甘やかす事においては右に出るものがいない二人組にも、怒りをぶつける。
「とは言ってもなあ、マルコ。あいつもう見えねえぜ」
のんびりと甲板に乗り出したサッチが目を凝らして陸地を見遣った。見えるのは町に向かってどんどん小さくなっていくエースの後姿だけで、しばらくするとそれも消えるように見えなくなってしまった。
「あいつはほんとに自由すぎるよい!」マルコは甲板のへりを握りしめて毒づいた。
「まあな、それがエースだから仕方がない」
サッチに次いでビスタも、まるで大した事がないような素振りをする。
天真爛漫を地でいくエースにとってはいつも通りのことだったが、最近のマルコにはそれがどうも気に入らなかった。マルコの指示をエースがことごとく軽んじるせいだからなのか、この苛々の原因はマルコにもわからない。ただエースの存在そのものがマルコを苛立たせるきっかけになっているのは事実だった。
「とりあえずエースを探して来てくれよい」
マルコはサッチにそう告げると、自分は部屋に引き上げるために踵を返した。
「なんだおめぇは降りねえのかよ」
「おめぇに任せた」
マルコは片手を上げておざなりな返事をして、その場を後にした。
- Continue ------------------------------------------------------
マルコが嫌な奴にみえませんように。
この話は真面目ドS×純粋生意気受けになりそうです。
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